日本成人矯正歯科学会

第30回秋季学会セミナー 抄録

昭和大学歯科病院 歯科衛生室技術主事 松原こずえ
タイトル:矯正歯科治療における歯科衛生士の役割

近年、口腔健康に対する意識がますます向上しており、「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針2022)」では、ウィズコロナ時代を見据え、「感染の防止対策としての口腔健康管理」といった具体的な政策提言が打ち出された。 矯正歯科においても、新型コロナウィルス感染症予防のマスク着用が習慣化したこともあり歯科治療を希望する患者数は激増している。

矯正歯科治療は、健康で調和のとれた口腔内環境を構築する一方で、治療中は装置装着により舌や頬粘膜の動きが制限され自浄性が低下する。また、ブラッシングの困難さによる不潔域の拡大、それに伴うう蝕や歯周病のリスクの上昇が懸念される。よって矯正歯科治療中は、歯周病やう蝕の発症や進行を抑制し、感染源となるバイオフィルムを除去して、良好な口腔内環境を維持する事が重要となる。そのためには、歯科衛生士による口腔衛生指導やPMTC等の専門的な口腔健康管理が必要不可欠である。

当院では2018年4月から、矯正歯科治療と併せた本格的なう蝕予防管理プログラムを導入した。様々な要因のリスクをプロトコル化して、患者個々の口腔内状態、生活習慣、ライフスタイルに合わせた管理指導が可能である。

またう蝕リスクのバランスを視覚的・簡潔的に評価し、患者自身の口腔健康管理に対する理解やモチベーションを向上させることを第一の目標としている。さらに、日々の生活習慣に介入するという点から、新型コロナウィルス感染症の流行や何らかの原因で通院間隔が開いた状況下においても効果を持続させることが可能となる。しかしながら、臨床応用していく中で工夫や改善しなければならない点も明らかとなってきた。

今回、当院で取り組んでいる具体的な方法についてお話させて頂くとともに、矯正歯科での歯科衛生士の取り組みについてデータを交えながらご紹介する。

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